第245話 無敗の相場師、ジャックとエース(後編)
2人の相場師は、目的地の定食屋に着いた。
定食屋の店先には、本日、貸切の札が掛かっていた。
「貸切にしてくれたんですか」、無敗の相場師A(エース)が驚いた顔でいう。
「私は予約をしただけなんだが」、無敗の相場師J(ジャック)がいう。
2人の相場師はのれんをくぐり、引き戸を引いて中に入った。
「いらっしゃいませ」店内にいた2人の女性の明るい声が、2人の相場師を迎えた。
1人は女性店主、1人は無敗の相場師Aが大学在学中から交際していた彼女だった。
「えっ、どうして」、無敗の相場師Aが驚いた顔でいう。
「どうしてでしょうね。まあ、いいじゃない、細かいことは気にしちゃダメよ。
今日の料理は、ほとんど彼女が作ったのよ」、女性店主が笑いながらいう。
「今日はわたしも腕をふるったんだから、残さず食べてよ」
無敗の相場師Aが大学在学中から交際していた彼女がいう。
「やられたな、あなたたちが呼んでくれたんですね」
無敗の相場師Aが、無敗の相場師Jと女性店主にいう。
「どちらが呼んだんだっけ」、無敗の相場師Jが女性店主と目を合わせて笑った。
女性店主は「用意するね」というと、無敗の相場師Aの彼女と厨房へ向かった。
無敗の相場師Jと無敗の相場師Aはイスに座った。
「上海でどうやって”ベイビー”の噂が本当か、確かめるんだい」、無敗の相場師Jがいう。
「い、今、その話ですか。数年ぶりに彼女と再会したんですよ。
彼女に会った感想とか聞くのが普通でしょ」、無敗の相場師Aがいう。
「そういうものなのか」、無敗の相場師Jがいう。
「そういうものですよ」、無敗の相場師Aがいう。
「じゃあ、数年ぶりに会った彼女はどうだ」、無敗の相場師Jがいう。
「もういいです。彼女に直接、いいますから」、無敗の相場師Aが呆れていう。
やがて、料理が運ばれてきて、4人は互いの近況を語り、盛り上がった。
「ということは、お互い振られたと思っていたの」、女性店主が笑いながらいう。
「こちらから連絡しても、返事がなかったんですよ」、無敗の相場師Aの彼女がいう。
「君を束縛したくなくて、返事をしなかったんだよ」、無敗の相場師Aがいう。
「先日、調べたが、彼には彼女はできていないよ。
けど、彼は1人暮らしの寂しさを紛らわせるためか、猫を飼っていた。
その猫にウィッグを被せては、君を思い出していたようだよ」、無敗の相場師Jがいう。
無敗の相場師Aは、飲んでいた焼酎のロックを噴き出しそうになった。
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