2018年11月5日月曜日

銘柄を明かさない理由R243 無敗の相場師、ジャックとエース(前編)

第243話 無敗の相場師、ジャックとエース(前編)

ニューヨーク証券取引所が、かってない規模で暴落した「ブラックフライデー」。
「ブラックフライデー」後の週明け、東京証券取引所以外の全ての市場が暴落した。
誰もが世界恐慌になると思ったが、週明けのニューヨーク証券取引所はプラスで引けた。
その後も、ニューヨーク証券取引所は堅調に推移、世界恐慌は回避された。

「ブラックフライデー」から3週間後、都内にある調査会社。
調査会社の社員、無敗の相場師J(ジャック)は定時になるのを待っていた。
「さっきから時計ばかり見てますけど、何か予定があるんですか」、女性社員が聞く。
「約束があるんだ、定時になったな、お先に」、無敗の相場師Jは退社した。

東京証券取引所本館の北、道路を挟んで日本橋川の辺に小さな神社がある。
神社といっても、さほど大きくなく、神主も常駐していない。
毎年4月1日の例大祭の日だけ、近くの神社から神主達が出向き儀式を執り行っている。
だが、この兜神社こそ、証券界の守り神とされている神社である。

無敗の相場師Jは、地下鉄を乗り継ぎ、待合せ場所の兜神社へ急いだ。
駅へ向かう会社員やOLの間を抜け、無敗の相場師Jは足早に兜神社へ向かった。
兜神社の暗がりの狭い境内には、1人の若い男がいた。
「待ったかな」、無敗の相場師Jが若い男に声をかける。

「さっき、着いたところですよ、ご無沙汰しています」
若い男は振り向くと、天使のような笑顔でいう。
「全く変わっていないな」、無敗の相場師Jが驚きながらいう。
「あなたも変わっていませんよ」、若い男が笑いながらいう。

「4年前に初めて君と、この兜神社で出会った。
君と出会ってから、いろいろなことがあったよ」、無敗の相場師Jがいう。
「それは私も同じですよ、私もいろいろなことがありましたよ」
若い男、無敗の相場師A(エース)こと、天使の笑顔をもつ男が笑いながらいった。

「ひさしぶりに、あの定食屋へ連れていってもらえませんか。
あと、これからの話もあります」、無敗の相場師Aがいう。
「それは、こちらも同じだよ。
じゃあ、久々に願掛けをするか」、無敗の相場師Jがいう。

2人の無敗の相場師は、兜神社への願掛けを終えると、定食屋へ向かって歩き始めた。
「日本には、いつ帰ってきたんだい」、無敗の相場師Jがいう。
「一昨日です。帰国してからは親戚や知人への挨拶回りで大忙しでした。
急に会いたいと連絡して申し訳ありませんでした」、無敗の相場師Aがいう。

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