第455話 これからを担う者(前編)
ムラノがいい終わると、クジョウがノートPCを閉じていった。
「以上が、これからを担う皆様へのメッセージになります」
しばらく、"謁見の間"の誰も言葉を発しなかった。
「さてと帰るかのう」、勝利がいい、電動車いすの向きを変えて、玄関へ向かった。
「ウチも帰るわ」、タエがいい、鈴木と玄関へ向かった。
「ほな、ワテも帰るわ」、コウヘイがいい、明と玄関へ向かった。
「では、私も失礼します」、クジョウがいい、玄関へ向かおうとした。
「クジョウと申したな」、朱蘭がクジョウを呼び止めた。
「何でしょうか」、クジョウが振り返って、朱蘭にいう。
「会長に命ぜられたと申したが、この度の筋書きはそなたが考えたのではないか」
豪華な朱色の椅子の肘掛けに肘をつき、手を頬にあてた朱蘭が、クジョウにいう。
「ご想像にお任せします」、クジョウは朱蘭にいうと、玄関へ向かった。
クジョウが玄関の外に出ると、皆が待っていた。
最初に声をかけてきたのは、タエだった。
「あんた、なかなかやるな、たいしたもんやで、名刺くれるか」、タエがクジョウにいう。
「クジョウと申します」、クジョウは名刺入れを取り出すと、タエに名刺を渡した。
「ジツオウジも、ええ社員を持っとるな」、タエが名刺を見ながらいう。
「恐れ入ります、今後ともよろしくお願いいたします」、クジョウがいう。
「こっちこそ、よろしく頼むわ、ほな行くわ」
タエは鈴木と駐車場へ向かって歩き始めた。
次に声をかけてきたのは、コウヘイだった。
「久しぶりやな、勝利はんと一緒におるのを見たときは驚いたわ。
いったい、どこで合流したんや」、コウヘイがいう。
「会長からの指示で大蔵様の入院先へ向かい、そこでお会いしました」、クジョウがいう。
「なんで、ジツオウジはんは大蔵はんの入院先を知ってたんや。
あと、今回の件を誰から聞いて知ったんや」、コウヘイがいう。
「会長は業界に長くいるので、知り合いは多く、大蔵様とも親しくされているようです。
テンマが誰かさんが心配だというので、こちらへ来る途中に、会長から連絡がありました。
山形行きの理由を聞かれ、今回の件を話すと、先に病院へ向かうよう指示がありました。
テンマが病院で待っているので、迎えを頼めますか」、クジョウがいう。
「なるほど、そういうことか、モテる男はつらいわ、明、病院まで送ってくれるか」
コウヘイは明と駐車場へ向かって駆け出した。
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