2020年7月14日火曜日

銘柄を明かさない理由R341 ダブル・ジョーカー(後編)

第341話 ダブル・ジョーカー(後編)

東京証券取引所のすぐ横にある兜神社。
"ジョーカー"が今後のご利益を祈願し終わったとき、背後から男の声がした。
「君がメールをくれた田中さんかな」
"ジョーカー"が振り向くと、どこにでもいそうな会社員風の男がいた。

「あなたがブログの管理人ですか」、"ジョーカー"がたずねる。
「そうだよ。はじめまして、これからは"J(ジェイ)"と呼んでくれ。
願掛けが終わったようだな、俺の行きつけの店へ行こう」、"J"がいう。
"J"ことジョウシマが連れて行ってくれた行きつけの店は、ありふれた定食屋だった。

ジョウシマは手慣れた様子で引き戸を開けると、店の中に入った。
続いて中に入ると、店主らしき女性が「いらっしゃいませ」と笑顔で出迎えてくれた。
壁には、きつねうどんやカレーライスの値札が並んでいる。
"ジョーカー"は思った、庶民的な店だ、しかし居心地はよさそうだと。

「いつものを頼むよ」、ジョウシマは女性店主にいった。
「何がいつものよ、いつ以来だと思っているのよ、あの時のを頼むでしょ」
女性店主は笑いながら、厨房にむかった。
やがて、晩酌セットが運ばれてきて、2人だけの酒宴が始まった。

"ジョーカー"が投資手法をたずね、ジョウシマがわかりやすい例えを用いて解説する。
ジョウシマの解説は、株式投資の経験がない"ジョーカー"にもわかりやすかった。
いつしか、時が経つのも忘れ、"ジョーカー"はジョウシマの解説に聞き入っていた。
「そろそろ、例のやつを頼む」、ジョウシマが女性店主に注文した。

女性店主が持ってきた瓶には、「魔王」というラベルが貼ってあった。
「ロックでいいかな」とジョウシマに聞かれ、"ジョーカー"はうなずいた。
ジョウシマは慣れた手つきで2人分のロックを作ると、"ジョーカー"にグラスを手渡した。
「乾杯だ」、ジョウシマはいい、2人はグラスを合わせた。

やがて、閉店時間になり、2人は店を出た。
「また、いつか飲もう」、ジョウシマがいい、"ジョーカー"は千鳥足で帰っていった。
"ジョーカー"が見えなくなると、物陰にいた1人の男がジョウシマに近づいてきた。
「奴は株式投資の経験がない素人です」、ジョウシマが近づいてきた男にいう。

「だろうな、奴は名のない組織に属する、通称"ジョーカー"と呼ばれる男だ。
名のない組織の活動資金はしれているので、貴様たちに頼ってきたのだろう。
我々が資金を供給するので、力になってやれ、無敗のJこと、無敗のジョーカー」
近づいてきた男がいうと、無敗のジョーカーこと、ジョウシマは不敵な笑みを浮かべた。

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