やがて開始時間になり、「研究会」が始まった。
部屋の照明が落とされ、スクリーンにパワーポイントが投射される。
前方に座っている巨躯の男が、直近の相場についてスライドを元に解説した。
「では、右から順に、戦果を報告せよ」、巨躯の男は命じた。
メガネをかけた中学生の男子生徒が読んでいた参考書を閉じた。
おもむろにメガネを外すと、メガネの曇りを拭きながら報告した。
男子生徒が手がけた銘柄での1ヶ月リターンは、驚くべき数字だった。
報告を終えると、男子生徒はメガネをかけ、再び参考書を開いて読み始めた。
次は、安物のスーツに使い古した革靴を履いた30代くらいの男性会社員だった。
男性会社員が顔を上げたとき、表情は一変していた。
鋭い眼光をもつ男の顔は、一度、見たら到底、忘れることはできない。
その男の手がけた銘柄と1ヶ月リターンも、驚くべき数字だった。
次は、派手なメイクの20代と思しき、水商売の女性だった。
女性は妖艶な、ぞっとするような笑みを浮かべていた。
名刺を渡された際の営業スマイルは、完全に消え去っていた。
女性の手がけた銘柄と1ヶ月リターンも、驚くべき数字だった。
車椅子の高齢男性、専業主婦らしき女性、フリーター風の男など。
他の出席者の報告も驚くべきリターンだった。
こいつら、いったい何者なんだ。
皆がこんなリターンを上げられるわけがない、天使の笑顔をもつ男は思った。
一通りの報告が終わった後、巨躯の男が話し出した。
関西のある相場師との仕手戦の内容と、桁違いのリターンの報告だった。
銘柄を聞いた天使の笑顔をもつ男は思った。
あの仕手戦での閃光の買いは、この男だったのかと。
やがて、質疑応答の時間になった。
派手なメイクの20代と思しき、水商売の女性がいった。
「さっきから気になっているんですけど、後ろのイケメンさんはどちらさんですか」
全員が振り返って、後方に立っている天使の笑顔をもつ男を見た。
巨躯の男がいう、「紹介が遅れたが、ワシの後継者だ」
「ご指導よろしくお願いしますね」、中学生の男子生徒が参考書を読みながらいう。
「先生の後継者ですか、きっと優秀なんでしょうね」、男性会社員がいう。
「後継者なら、さぞかし投資がお強いのかしら」、水商売の女性がいう。
