2024年6月26日水曜日

【小説】まとめ屋~vol.378~

ある日の深夜、あるチャットスペースで会話が始まった。

X:お疲れ
Z:お疲れ
B:おつかれ
X:Yのバカはいねえのか
Z:さっきまで来るの待ってたわよ
X:何かあったのか
B:ついに自宅を特定したらしいよ
X:誰の自宅を特定したんだ
Z:例のネットストーカーの自宅よ
X:誰のことだ
B:数年前、複数のアカウントを持つ高齢男性がいた
B:その男性は、長年にわたり、ある女性に誹謗中傷を行った
B:男性は女性に訴えられ、女性への謝罪と支払い命令が出たw
X:全国版のニュースになったやつか
Z:あのとき、自宅を特定しようとした人は多かったわね
B:情報が少なかったので、誰も特定できなかったけどね
X:あのバカはどうやって特定したんだ
B:当時、男性宅を訪れ、記事にしたマスコミがいた
B:その記事に、男性宅の玄関回りが写った画像があった
B:その画像と同じ玄関を、ストリートビューで探したらしいよ
X:たしか市区町村の情報はなかったろ
Z:広範囲を時間をかけて探してたらしいわよ
B:最後は現地に行って確認したので、間違いないらしいよ
X:あのバカ、すげえな
B:あと、その男性の自宅が、裁判している相手のすぐ近くだったらしいよ
X:マジか
B:相手の自宅マンションから徒歩で行けたらしいよ
Z:同じ町内の番地違いだったらしいわよ
X:もしかして、何か繋がりがあんのかもな
B:その可能性があるので、さらに調べるらしいよ
X:なかなかの情報だったな、さてとそろそろ寝るわ、おやすみ
Z:わたしも寝るわ、おやすみ
B:おやすみ

彼らのネット歴は長く、法に抵触しない範囲で遊んでいた。
彼らは遊んでいたが、その遊びはいつも誰かのためだった。
そんな彼らが愛読しているのは「予告犯」というタイトルのマンガだった。
チャット画面を閉じた彼らは、ネタ探しのため、ネットサーフィンを始めた。

彼らのネット歴は長かったが、そんな彼らにも知らないことがあった。
彼らは、関わった一部の人から、「まとめ屋」と呼ばれていた。

同時刻、警視庁サイバー犯罪対策課
「交替の時間ですよ」、1人の男がPCを観ている男の背後から声をかけた。
「もう、そんな時間か」、声をかけられた男が振り返っていう。
「また、まとめ屋のサイト見てたんですか」、声をかけた男がいう。
「女性に誹謗中傷を行い、ニュースになった高齢者がいたな」、声をかけられた男がいう。
「ツイッターに発信者情報開示請求した案件ですか」、声をかけた男がいう。
「その案件だが、たしか、刑事告訴もされたんだよな」、声をかけられた男がいう。
「結局、検察は不起訴にしたようですね」、声をかけた男がいう。
「高齢者は反省しているのか」、声をかけられた男がいう。
「検察の取り調べには、遊びのつもりだったと供述したそうです」、声をかけた男がいう。
「自らの非を認めず、反省する気もなしか」、声をかけられた男がいう。
「認知機能の低下に気づいていないのかもしれませんね」、声をかけた男がいう。
「かもな、あとはよろしく」、声をかけられた男がいう。
「了解」、声をかけた男はいうと、席を立った男と入れ替わりに席に座った。

認知とは理解・判断・論理などの知的機能を指し、精神医学的には知能に類似した意味であり、心理学では知覚を中心とした概念です。心理学的には知覚・判断・想像・推論・決定・記憶・言語理解といったさまざまな要素が含まれますが、これらを包括して認知と呼ばれるようになりました。
しかし一般的には認知機能は主に認知症における障害の程度を表す場合に用いられることが多いようです。認知症では物忘れにみられるような記憶の障害のほか、判断・計算・理解・学習・思考・言語などを含む脳の高次の機能に障害がみられますが、その障害がみられる脳の機能として認知機能と表現されます。
(「e-ヘルスネット」厚生労働省ホームページ)
「予告犯」筒井哲也氏より
-------------------------------------------------------
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
ネットの誹謗中傷をなくすにはどうしたらよいかをテーマに書いています。
誹謗中傷された場合の法的手続きですが、費用対効果は決してよいとはいえません。
また、相手から虚偽告訴罪で訴えられる可能性もあります。
誹謗中傷されたら、やり返さずに弁護士に相談されることをオススメします。
相談すれば、どのような罪に問えるかなど、アドバイスしてもらえることが多いです。
「まとめ屋」の方法はリーガルチェックを受けていないため、行わないでくださいw

0 件のコメント:

コメントを投稿