都内のある調査会社。
オフィスで仕事をしていた男に、女性社員が声をかけた。
「社長がお呼びです、今すぐ社長室へ来てくださいって、また何かよくないことされました」
「前にもいったろ、心当たりは山ほどあると」、男は社長室へ向かった。
社長室に着いた男は、軽くノックをした。
「入りたまえ」、男が社長室に入ると、社長は窓の外を見て、しばらく黙っていた。
「遠慮は要らん、掛けたまえ」、太った貫禄ある社長が振り向きながらいう。
とっくに、男はソファに座っていた。
「す、座っていたのか、まあいい」、社長がバツがわるそうにいった。
「また仕事の依頼ですか」、男はたずねた。
「ああ、そうだ、我が社のお得意様からの依頼、しかも至急とのことだ」、社長がいう。
「調査する内容はどういったことでしょう」、男が聞いた。
「ある大手企業を乗っ取る計画があるらしい、本当なのかを調べて欲しい」、社長がいう。
「誰が乗っ取ろうとしているのですか」、男はいった。
「淀屋という一族で、首謀者は難波の女帝と呼ばれている相場師らしい」、社長がいう。
「ちょっと待ってください」、男はいった。
「我が社のお得意様は、世界有数の保険法人ですよね。
なぜ保険法人が日本企業の乗っ取りについて、調査を依頼するのですか」、男はたずねた。
「乗っ取ったあと、外資企業に売り渡すらしい。
大手企業が外資企業に売り渡されれば、何らかの影響があるのだろう」、社長はいった。
「調査に与えられた期間は」、男がたずねた。
「お得意様は3日後の報告を希望している、どうだ、できるか」、社長がたずねた。
「できなくても、やらざるをえないのでしょう」、男はいった。
「当たり前だ、お客様は神様だからな」、太った社長は笑いながらいった。
席へ戻った男に、女性社員が声をかけた。
「飲み物をお持ちしましょうか」
「ありがとう、だが今はいい」、男はいった、
「お役にたてることがあるなら、何なりと仰ってください」、女性社員がいった。
「自分のことは自分で何とかするよ。その気遣いだけで十分だよ」
3日間で大手企業乗っ取り計画が本当なのか突き止めろか。
どうすれば、突き止めることができる。
キーワードは「淀屋」に「難波の女帝」か、男は考え始めた。