小柄な小動物を連想させる女性社員は、トレーディングの真っ最中だった。
変だわ、小柄な小動物を連想させる女性社員は思った。
一見すると、別々の大口の買い注文と売り注文に見える。
だが、よく見ていると、約定するタイミングが同じだった。
株価操縦だわ、察知した女性はインカムの通話スイッチを入れた。
「株価操縦の動きを確認、シンプルプランの発動をお願いします」、女性が報告する。
「了解」、創設者の女性社員から応答があった。
おかしな動きがあるかもしれないという話は本当だったんだわ、女性は思った。
アルカディアの創設者である無敗のクイーンから話があった。
「無敗の個人投資家たちのログイン画面に、何者かが頻繁にアクセスしているようだ。
おかしな動きがあったら、すぐ報告しろ。
合い言葉は、シンプルプランを発動しろだ」
シンプルプランの発動依頼を受けた無敗のクイーンは、システムを起動した。
取締役会で、情報システムの社員から報告があった。
無敗の個人投資家たちの売買データが狙われているというものだった。
味方ならこのような手の込んだことはしない、無敗のクイーンは思った。
無敗のクイーンは攻撃に備え、情報システムにあるシステムの構築を依頼した。
依頼したのは、架空の個人投資家の取引口座をベースにしたシステムだった。
架空の個人投資家の取引口座は、過去の取引は無敗で運用額は数億円だった。
情報システムによる突貫作業でデータは完成、完成後は定期的にログインさせていた。
無敗の個人投資家たちの売買データを狙うのなら、必ずこのデータに食いつく筈だ。
「オートログイン完了、シンプルプラン発動」、システムの電子音声が告げる。
電子音声は依頼していなかったが、奴には余裕の仕事だったってことか。
「不正ログイン感知」、システムの電子音声が告げた。
架空の個人投資家の取引口座には、いくつかの保有銘柄が仕込んであった。
また売買プログラムには、各銘柄の値動きを基にしたアルゴリズムが組み込んであった。
現在の株価と出来高から、買値、売値および数量を自動計算、発注するシステムだった。
無敗のクイーンは、日頃の出来高が少ないある銘柄に狙いを定めた。
無敗のクイーンは素早く銘柄コードを入力、ENTERキーを叩いた。
モニターの取引画面に、自動でいくつかの買い注文が浮かび上がった。
ほどなくして呼応するかのように、大口の買い注文と売り注文が現れた。
「わかりやすいな、やはり敵か」、無敗のクイーンはつぶやいた。
