2021年1月31日日曜日

【エッセイ】新築住宅を購入する前に知っておきたいこと

自身は長年、住宅業界で働いてきた。
最先端の知見を有する人から、現場で作業する職人まで、多くの人と仕事をしてきた。
比較的、合格者が少ないとされている一級建築士の有資格者でもある。
新築住宅を購入する前に知っておきたいことについて書いてみるw

1.新築住宅で価格に見合う品質は期待できないと認識すること。
なぜなら、新築住宅の現場で実際に作業する職人は、末端の下請けだからである。
住宅業界では、受注した会社が下請けに丸投げ、下請けは職人に丸投げする。
丸投げするたびに、マージンを取られるため、職人にはぎりぎりの金しか入らないw

2.地盤調査結果を鵜呑みにしないこと。
なぜなら、ビルやマンションの地盤調査と異なり、住宅の地盤調査は簡易調査である。
住宅の地盤調査では、敷地の数か所を調べるだけである。
そのようなピンポイント調査で、地盤の状態がわかるはずがないw

3.多くの住宅では手抜き工事が横行していると認識すること。
1でも書いたように、作業する職人はぎりぎりの金額しかもらっていない。
全ての職人がそうではないが、少しでも儲けようとする職人は平気で手を抜く。
規定の本数の釘を打たない、指定された品質より低い材料を使うなどであるw

1は、業界の古くからの慣習なので、残念ながらいかんともしがたい。
どうしても、価格に見合う品質にしたければ、自分で全職人に発注するしかない。
だが、発注するには、作業内容と適正価格を知っておくことが必要になる。
したがって、業界関係者以外の人が、発注することは、実質、不可能であるw

2は、敷地の前歴と過去の地形を確認すれば、ある程度、地盤状態を推測できる。
以前、建物が建っていた土地であれば、地盤補強が不要な地盤であることが多い。
田畑を埋め立てた造成地であれば、地盤補強が高確率で必要となる。
過去の地形が「扇状地」や「谷底平野」等の土地も、地盤補強が高確率で必要となるw

3は、建て主自身が、建築中に現場へ顔を出すことで、ある程度の抑止力になる。
1でも書いたように、受注会社、下請け、職人は、利益優先である。
建て主自身が現場へ顔を出すことで、彼らは手を抜きにくくなる。
もちろん、発注している立場なので、現場へ行く際、差し入れ等は不要であるw

【エッセイ】評価額の増減が激しかった月に思うこと

今月は、保有株の評価額の増減が激しかった。
月中に昨年末より約380万円ほど増加、月末では約80万円の増加だった。
もし、会社員を辞めていなかったら、空しさの中で仕事をしていただろう。
なぜなら、1日で賞与以上の額が増減する日が多かったからであるw

運用額が多い人はご存じだろうが、運用額が多いと評価額の増減も大きくなる。
何もしなくても、給与や賞与以上に増減するようになる。
すると、労働の対価として、給与や賞与を得ていることが空しくなってくる。
辞める1年ほど前からは、配当金で生活費を賄えるようになり、より空しさが大きくなったw

会社員は、給与や賞与を得るために、時間を拘束される。
仕事で成果を出しても、全てが自分に還元されるわけでもない。
住宅ローンを返済中で金と気持ちに余裕がない上司に、忖度しなくてはならない。
金融リテラシーが高いとはいえない人たちと、同内容の仕事をしなくてはならないw

会社員を辞めてから、空しさを感じることはなくなった。
自身には株式投資の収入のほかに、大家としての家賃収入がある。
所得にすると、月額数万円ほどだが、大家業に関しては空しさを感じることはない。
なぜなら、大家業で時間を拘束されることは、ほとんどないからであるw

2021年1月30日土曜日

【エッセイ】投機で勝てる人、投資で勝てる人

「投機」とは、「機会に乗じて、短期間で利益(利ざや)を得ようとする行為」。
わかりやすくいえば、「安いときに買い、高いときに売る」取引である。
「投機」で必要なのは、株価推移や出来高など、テクニカル分析だけである。
自身からいわせると、「投機」はギャンブルと何ら変わらないw

「投資」とは、「長期的な視野で資金をビジネス(事業)に投じる行為」。
企業が発行する「株式」に資金を投じ、企業価値の増加を期待する行為である。
企業価値の増加とは、利益や配当の増加、株価の値上がりなどである。
「投資」ではテクニカル分析に加え、企業価値等のファンダメンタルズ分析が必要になるw

たまに、「投資では早めの損切りが必要」という意見を目にすることがある。
投資先の企業が倒産しない限り、投資で損切りはあり得ない。
正しくは、「投資は、投資先の企業が倒産しない限り、損切りしてはならない」
「投機は、短期間で利益を得なくてはならないので、早めの損切りが必要」であるw

あと、「投機」は資金と強運があれば、勝てる。
しかしながら、「投資」は資金があっても、賢明でないと勝てない。
このことは、バリュー投資の父であるベンジャミン・グレアムの著書のタイトルでわかる。
著書のタイトルは「The Intelligent investor(賢明なる投資家)」であるw

【エッセイ】尊重欲求レベルが低い人の困った行動

自身が会社員だった頃、取引先からいわれたことがある。
「先日、定年退職された元取締役が来られましたよ、ヒマだといっていました」。
おそらく、ヒマを持て余しての行動だったのだろう。
応対しても何のメリットもない取引先からすると、困った行動であるw

アメリカの心理学者、アブラハム・マズローは、欲求を5段階の階層で理論化している。
5段階の中に「社会的欲求と愛の欲求 (Social needs / Love and belonging)」がある。
自分が社会に必要とされている、果たせる社会的役割を求める欲求である。
孤独・追放・拒否・無縁状態になった場合、痛恨をひどく感じるようになるらしいw

5段階の中には「承認(尊重)の欲求 (Esteem)」もある。
自分が集団から価値ある存在と認められ、尊重されることを求める欲求。
低いレベルの尊重欲求は、他者からの尊敬、地位、名声などによって満たされる。
マズローは、低いレベルの尊重欲求にとどまり続けることは危険だとしているw

高いレベルの尊重欲求は、自己尊重感、技術や能力などを得ることで満たされる。
このレベルにおいては、他人からの評価よりも、自分自身の評価が重視される。
元取締役は、仕事ができる人で、それなりに人望もあった。
だが、尊重欲求のレベルは高くなかったようであるw

2021年1月29日金曜日

銘柄を明かさない理由R409 別れの時(後編)

第409話 別れの時(後編)

東京駅へ歩いていく勝利と三助の後ろ姿を、道に立つ男が見ていた。
見ている男は、坊主頭で巨体の着物姿の本間大蔵だった。
楽しそうに歩いていく2人を見る大蔵は、どことなく寂しげだった。
2人が角を曲がって見えなくなると、肩を落とした大蔵は来た方向へ帰ろうとした。

帰ろうと振り返った大蔵の目の前に、黒のスーツ姿で黒の眼帯をした犬神がいた。
「い、犬神・・・」、犬神を見た大蔵がいう。
「2人へ餞別を渡さなかったのか」、犬神が大蔵が持っている菓子折りを見ていう。
「ち、ち、ちがう、これはワシが食べるんじゃ」、大蔵がいう。

「それにしても、気持ちのいい男たちだったな」、犬神がいう。
「ああ、それについては異論はない」、大蔵がいう。
「あの2人のように、俺たちも相場を盛り上げないとな」、犬神が笑みを浮かべていう。
「おうよ、いつでもかかってこい、犬神」、大蔵が嬉しそうにいった。

東京駅へ向かう勝利と三助が角を曲がると、目の前に1人の女性がいた。
女性は茶のコートを着た事務員の山崎で、茶色のトランクを携えていた。
「山崎やないか、体調わるいんやないんか」、勝利がいう。
「荷造りの時間が欲しかったので、ずる休みしました」、山崎がいう。

「荷造りって、引っ越しでもするんか」、勝利がいう。
「お2人がいなくなる淀三証券からの引っ越しです。
山崎は、お2人についていくことにしました」、山崎がいう。
「ええええ~っ」、勝利と三助が同時に声をあげた。

「や、山崎、ワテらについてきても、何もええことあらへん」、勝利がいう。
「そ、そうや、犬神はんが面倒をみてくれる、考え直すんや」、三助がいう。
「山崎は、心底、好きになった男には、何があっても、ついていくと決めてました。
誰に何といわれようが、絶対についていきます」、山崎がいう。

好きになった男って、エロ坊主の本間大蔵から助けたったワテのことやな。
しゃあないな、そこまでいうんなら、つれていったろか、勝利は思った。
「三助さん、山崎もつれていってください」、山崎が三助に抱きついていった。
ワテとちゃうんか~い、勝利は思わず声に出しそうになった。

電器屋の店先のラジオから、神楽坂はん子の「こんな私じゃなかったに」が流れてきた。
ひろい世界にただひとり~なぜにあなたがこう可愛い~♪
君の寝顔に頬あてて~女ごころの忍び泣き~こんな私じゃなかったに~♪
この敗北感・・・仕手戦の敗北感より大きいかもしれへんな、勝利は思った。
-------------------------------------------------------
「第30章 伝説の仕手戦」をお読みいただき、ありがとうございました。
神楽坂はん子の「こんな私じゃなかったに」を視聴したい方は、下から視聴できますw

銘柄を明かさない理由R408 別れの時(中編)

第408話 別れの時(中編)

「白井は指示に対して、いつも、なぜですかと聞いてきよる、なぜなぜ小僧やった。
ホンマ、うっとうしかったわ」、白井は申し訳なさそうにうつむいた。
「けど、尾上セメントを買おうとしたとき、白井のなぜで財務内容を確認できた。
結果、買いを見送ったことで、倒産する尾上セメントを買わんで済んだ」、勝利がいった。

「板垣は白井と正反対やったな、頭より体が先に動く、な~んも考えへん男や。
ホンマ、扱いづらかったわ」、板垣は申し訳なさそうにうつむいた。
「けど、カスミ電機を買うか迷うとったとき、板垣はいうてくれた。
すぐに決めてくださいと、おかげで買いを即決、儲けることができた」、勝利がいった。

淀屋らしいな、さりげなく彼らの長所を、俺に伝えるとは、犬神は思った。
「白井、板垣、今のお前らは、兜証券では間違いなく下っ端や。
最初は、お茶くみや電話番をやらされるかもしれへん。
けど、お前らには誰にも負けへん、ええとこがある、頑張るんやで」、勝利がいった。

こらえきれなくなった三助が泣きながらいった。
「白井・・・、板垣・・・、頑張るんやで」
「ほ、本当にありがとうございました。淀三証券でのことは一生、忘れません」
白井が大粒の涙を流しながらいった。

「し、白井みたいに、め、女々しく泣いてたまるか・・・。
社長・・・、三助さん・・・、本当にお世話になりました。
この板垣、兜証券の下っ端として、一から頑張ります」
板垣が泣くのを必死でこらえながらいった。

淀屋、お前の望みは叶えてやる、こいつらの面倒は俺がみてやる、犬神は思った。
「さてと、ほな、行こか、三助」、勝利がいう。
「は、はい、九代目」、三助が涙を拭っていう。
「淀屋、これからどうするんだ」、犬神が聞く。

「どうしたらええかは、お月様が教えてくれるやろ、なあ三助」、勝利がいう。
「そうでんな、お月様の教えに従いましょう」、三助がいう。
「ほな、犬神はん、白井と板垣、あと山崎のこと、よろしく頼んます」
旅行カバンを持った勝利と風呂敷を背負った三助は、頭を下げると、淀三証券を出た。

「九代目、どこへ向かうんでっか」、風呂敷を背負った三助が勝利に聞く。
「そうやな、とりあえず、一旦、大阪へ帰ろか。
大阪に帰ってから、お月様に行先を聞こか」、旅行カバンを持った勝利がいう。
「わかりました、九代目」、2人は東京駅へ向かって歩き始めた。

【エッセイ】信用取引をしない理由

東京証券取引所作成の「信用取引制度の概要」がある。
同資料によると、信用取引の主な利用主体は個人投資家で93%。
さらに、個人投資家の売買は、現金取引40%に対し、信用取引60%らしい。
自身は信用取引をしないが、しない理由について書いてみるw

信用取引のメリットは、下記だといわれている。
1.手元資金以上の取引を行うことが可能→レバレッジ効果
2.手持ちの有価証券を保証金として利用可能→代用有価証券
3.「売り」から入ることが可能→保有株式の株価下落リスクのヘッジw

自身が信用取引をしないのは、上記がメリットではなく、デメリットだからである。
1.手元資金以上の取引を行うことが可能→借入による金利、貸株料等のコスト増
2.手持ちの有価証券を保証金として利用可能→損失を確定させられるリスク発生
3.「売り」から入ることが可能→売りコスト>買いコストのため、±0にはならないw

下図は、2020年1月から現在までの評価損益率の推移である。
評価損益率は、信用取引を行っている投資家の含み損益を、%で表している。
2020年1月から、一度もプラスになっていないことが、おわかりいただけるだろう。
信用取引で儲けることができたとしても、運がよかっただけにすぎないのであるw

2021年1月28日木曜日

銘柄を明かさない理由R407 別れの時(前編)

自身はオリジナル小説「銘柄を明かさない理由R」を執筆している。
「銘柄を明かさない理由R」は、5人の無敗の相場師と取り巻く人々の物語である。
現在、新シリーズの「出羽の天狗(でわのてんぐ)編」を執筆中である。
「出羽の天狗編」では、東の本間と西の淀屋の戦いが物語の軸となる。

本間大蔵と淀屋勝利の戦いを書いた"第30章 伝説の仕手戦"。
いよいよ、第30章の終わりが近づきつつある。
書き終えていたが、登場人物たちから依頼があった訂正に追われている。
では、「銘柄を明かさない理由R 出羽の天狗編」をお届けするw
-------------------------------------------------------

第407話 別れの時(前編)

1953年(昭和28年)2月12日。
兜証券の社長室には、黒い眼帯をした社長の犬神、淀三証券の勝利と三助がいた。
ソファに坐る3人の前に、お茶を出した秘書が退室した。
「悔いはないのか、返済期限を延ばしてもいいんだぞ」、犬神がいう。

「男と男の約束を守れんかったんや。
淀三証券は兜証券のもんや、悔いはあらへん」、勝利がいう。
「東証(東京証券取引所)の臨時立会停止がなければ、間違いなく勝っていた。
今回の敗因は淀屋じゃなく、外部要因の不可抗力だろう」、犬神がいう。

「確かに、犬神はんのいう通りかもしれへん。
けど、負けたことに変わりはあらへん、淀三証券をよろしく頼んます」、勝利がいう。
犬神は淀屋の才能をかっており、何とか残って欲しいと思っていた。
「淀屋、お前の望みは何だ、俺が叶えられることか」、犬神が勝利に聞いた。

「望みでっか」、勝利はいうと考え始めた。
望みなんて考えたことなかったな・・・そうや、1つだけあったわ。
勝利は愛嬌のある笑みを浮かべると、犬神にいった。
「犬神はん、明日の朝、淀三証券に来ていただけまっか」

翌朝、兜町の淀三証券。
1階の洋間には、三助と白井と板垣の3人が、元気なく椅子に座っていた。
玄関の引き戸が開く音がすると、犬神を連れたグレーのスーツ姿の勝利が現れた。
「おはよう、どないしたんや、元気ないな」、勝利がいう。

三助、白井、板垣の3人は、うつむいたままだった。
「山崎はどうした、なんで、おらへんねん」、勝利が聞く。
「山崎は体調不良で休みです」、ロイド眼鏡をかけた白井がいう。
「そうか、ほな、始めようか」、勝利がいった。

勝利は、白井、板垣を見渡せる位置に立った。
勝利の後ろには、三助と黒のスーツ姿の犬神が立っていた。
「え~とやな、ワテの失態で、淀三証券を兜証券に譲渡することになった。
今までいろいろとありがとうな」、勝利がいった。

「社長、辞めないでください」、白井がロイド眼鏡を外して、涙を拭った。
「これから面白くなると思ってたのに・・・」、板垣は必死で泣くのをこらえていた。
「最後やから、いうといたるけど、お前ら2人はホンマに足手まといやったわ」
白井と板垣に、勝利が声のトーンを落としていった。

【コラム】今の株高は不思議なことじゃない

景気がよくないのに、株高なのは不思議だという意見を見ることがある。
自身からすると、株高になって当たり前で、当面、この状況は続くだろうとみている。
相場には4つのサイクルがあるといわれている。
「金融相場」、「業績相場」、「逆金融相場」、「逆業績相場」であるw

昨年、新型ウイルスの影響により、企業業績が悪化するという懸念から、株価は暴落した。
すなわち、業績悪化への懸念から、株が売られる「逆業績相場」だった。
その後、各国の金融緩和や低金利政策によって、膨大な金が市場にあふれることになった。
あふれた膨大な金で運用益が得られる株が買われる「金融相場」となった。

今年に入ってからも、金融緩和や低金利政策による「金融相場」は続いている。
だが、これからは「金融相場」に「業績相場」が重なる可能性が高い。
昨年から、多くの企業で、早期退職などによる経費削減が行われている。
経費削減により企業業績が向上、さらに株が買われる「業績相場」になるとみているw

相場が天井になりやすいのは、「業績相場」から「逆金融相場」の間といわれている。
「逆金融相場」は、金融引き締めや政策金利の引き上げにより、株が売られる相場である。
各国が金融緩和や低金利政策を続けると表明していることから、天井はまだ先となる。
なお、上記はあくまでも個人の意見なので、投資判断は自己責任でお願いするw

2021年1月27日水曜日

銘柄を明かさない理由R406 伝説の仕手戦(後編)

第406話 伝説の仕手戦(後編)

1953年(昭和28年)の大発会。
東京証券取引所の立会場では、熾烈な仕手戦が繰り広げられていた。
「三助、今の情勢はどうや」、勝利が、双眼鏡で黒板を見ている三助の横に来て聞く。
「売り方と買い方、五分五分です」、三助が双眼鏡から目を離さずいう。

「年明け早々、えらい相場やな」、汗を拭きながら勝利がいう。
「兜証券の社員はんたちが、頑張ってくれてます。
九代目、このままいけば、今日は勝てるかもしれまへん」、三助がいう。
「ほな、もう一踏ん張りしてくるわ」、勝利がポストへ駆け出した。

昨年から、東京証券取引所の立会場では、かってない規模の仕手戦が行われていた。
買い方は、淀三証券、犬神が率いる兜証券などだった。
売り方は、本間大蔵が率いる本間商会、大手証券会社の山井証券、栄証券などがいた。
3銘柄を対象とした大規模な仕手戦に、東京証券取引所は熱気に包まれていた。

1953年(昭和28年)1月28日。
売り買いの均衡が崩れ、売り方による怒涛の売りが始まった。
「なんや、この売りは」、勝利と三助は下落する株価を見ていた。
勝利と三助が見ている中、3銘柄の取引終値は大幅に下がった。

翌朝、東京証券取引所の立会場に、黒の眼帯をした犬神が現れた。
「"鬼神"が出てきた」、「旭日硝子みたいにやられるぞ」、売り方の間に不安が広がった。
「成り行きで全部買え」、犬神は自社の社員に激を飛ばした。
"鬼神"こと犬神が現れたことにより、3銘柄の株価は騰がり始めた。

「買って買って買いまくれ」、犬神は自社の社員に激を飛ばし続けた。
犬神に恐れをなした、山井証券と栄証券は、早々に手仕舞いすることを決めた。
「根性なしが」、本間大蔵は手仕舞いする山井証券と栄証券を見ていった。
犬神のくそがあ、本間大蔵が率いる本間商会は、売りを続けた。

「九代目、犬神はんの陣頭指揮でとんでもないことになってます」、三助がいう。
「さすが、犬神はんや、三助、淀三も全力で買いや」、勝利がいう。
「承知しました、淀三も全力で買い向かいます」
三助は両手を上げ、白井と板垣に買いの合図を送った。

"鬼神"こと犬神が率いる兜証券と淀三証券による、怒涛の買いが始まった。
株価急騰と出来高激増のため、東京証券取引所は、その日の立会時間を短縮した。
同年2月9日、過熱相場を危惧した東京証券取引所は、臨時立会の停止を決定した。
同年2月11日、臨時立会の停止により、3銘柄の株価は急落した。

銘柄を明かさない理由R405 伝説の仕手戦(中編)

第405話 伝説の仕手戦(中編)

勝利と三助が犬神と会った日の夜。
日本橋の花街にある料亭の一室では、宴が行われていた。
「酒田照る照る、堂島曇る、江戸の蔵米(くらまい)雨が降る~」
芸妓(げいぎ)が他の芸妓が奏でる楽器と歌声に合わせ、踊っていた。

芸妓たちの舞踊が終わると、拍手が起こった。
「ほれ、祝儀じゃ」、坊主頭で巨体の着物姿の本間大蔵が、芸妓たちに祝儀を渡した。
祝儀を受け取った芸妓たちは、大蔵に礼をいい、退室した。
「ほれ、飲め」、大蔵が向かいに座る証券金融会社の柴崎に、徳利を持った手を伸ばした。

「いただきます」、柴崎が両手でお猪口を差し出す。
大蔵が酒を注ぎ終わると、柴崎はこぼれそうになったお猪口に慌てて口をつけた。
2人の間にある座敷机には、豪勢な料理が並んでいた。
「ところで、淀三証券から貸借取引の申し入れはあったか」、大蔵が聞く。

「今のところ、淀三証券から貸借取引の申し入れはございません。
仮にあったところで、過去の実績がないので、少額の貸付になるでしょう」
刺身を箸でつまみながら、柴崎がいった。
「ははは、そりゃそうじゃな」、大蔵が上機嫌で自分のお猪口を口にした。

「貸借取引」は、証券金融会社が証券会社に対して必要な資金や株券を貸し付ける取引。
証券会社の資金や株式が不足すると、不足分を調達するために「貸借取引」が行われる。
「貸借取引」は、内閣総理大臣の免許を受けた証券金融会社にのみ認められている。
現在の東京証券取引所は、日本証券金融株式会社を、証券金融会社として指定している。

小一時間ほどすると、柴崎がいった。
「本日はお招きいただき、ありがとうございました、そろそろ失礼いたします。
資金がご入用の際は、いつでも、この柴崎に仰ってください」
本間様のためなら、迅速にご用意させていただきます」

「よろしゅう頼むわ」、大蔵がいい、柴崎は退室した。
おそらく、淀三証券には、3銘柄を買い続けるだけの金はない。
仮に、証券金融会社に「貸借取引」を申し込んでも、借りれる額は少ない。
にわか天狗になっとる淀三証券には、"出羽の天狗"である本間大蔵が天罰をくらわす。

天罰くらうてから後悔する顔が目に浮かぶわい、大蔵は手酌で酒をあおった。
したたかに酔った大蔵は腰を上げると、隣の和室に続く襖を開けた。
隣の和室には布団が敷かれており、布団の上には背を向けた芸妓が座っていた。
前祝いと洒落こもうか、大蔵は好色な笑みを浮かべた。

【コラム】負のスパイラルを断ち切るための最適解

いい歳なのに、いつまでたっても引退しないアスリートを見るたびに思う。
チームや若手のことを考えるのであれば、引退しろよと。
大幅に給与を減らされた再雇用で、定年後も働く会社員も同じである。
彼らによって、負のスパイラルが生まれているw

彼らが引退しない理由は、様々だろう。
「世間から忘れられたくない」
「住宅ローンもあるし、子どもの学費が必要」
「貯蓄と年金だけでは生活できない」などなどw

だが、彼らが引退しないので、所属団体、会社、業界の雇用条件がわるくなる。
すると、現役世代の収入が低下することになる。
収入が低下すれば、晩婚化が進み、住宅の購入や子育ての時期が遅くなる。
現役世代は、いつまでたっても引退できないことになるw

このような負のスパイラルが、延々と続くことになる。
長い人生の中で、第一線で活躍できる期間は限られている。
活躍できる期間に、引退を見据えた準備をしておくべきである。
負のスパイラルを断ち切るための最適解は、もちろん、株式投資であるw

2021年1月26日火曜日

銘柄を明かさない理由R404 伝説の仕手戦(前編)

第404話 伝説の仕手戦(前編)

「久しぶりに会ったが、相変わらず面白い奴だな」、笑みを浮かべた犬神がいう。
「そんな、おもろいこというたつもりはないんやけど。
久しぶりって、前にどっかで会うてましたっけ」、勝利が犬神をまじまじと見ながら聞く。
「かっての教官を忘れたのか」、犬神がいう。

「教官・・・、ぐ、軍事教練の教官やった犬神少佐でっか」、勝利が驚いていう。
「あれから、いろいろあってな、今はここの社長だよ。
淀屋の噂は聞いていたよ、久々に会えて嬉しいよ」、犬神がいう。
「ワテも嬉しいです、眼帯してはるんで、わかりまへんでした」、勝利がいう。

軍事教練とは、大日本帝国の学校における教練をいう。
1925年から、陸軍現役将校が対象の学校に配属され行われた。
勝利が通っていた大学でも、軍事教練が行われており、犬神少佐が教官だった。
その日の午前、勝利たちは初めての軍事教練を受けることになっていた。

校庭に整列する学生たちの前に、険しい顔つきをした犬神少佐が現れた。
「教官の犬神だ、軍事教練を始める前に、きさまらに確認することがある。
この中に食堂のふかし芋をつまみ食いした奴がいる、身に覚えのある奴は名乗り出ろ」
誰も名乗り出ないので、犬神少佐は学生たちの顔を見て回った。

「きさまか、つまみ食いしたのは」、立ち止まった犬神少佐が勝利に聞く。
「自分はしてないであります」、勝利が直立不動のままいう。
「じゃあ、口の端についてる芋は何だ、教練が終わるまで校庭を走っていろ」
「了解であります」、勝利は校庭を走り始めた。

勝利が犬神との出会いを回想していると、犬神がいった。
「ここだけの話、淀屋には教えといてやる、この眼帯ははったりだ。
眼帯していれば、戦闘で目を負傷した勇敢な人という印象を与えることができる」
犬神が右手を使って眼帯を上にあげると、無傷の右目があった。

「ところで、信用取引には、株券もしくは現金の担保が必要になる。
担保は用意できるのか」、眼帯を下げた犬神が勝利に聞く。
「株券も金も足りへんので、淀三証券を担保にしたいんや。
期限までに返済できへんかったら、淀三証券は兜証券のもんや」、勝利がいう。

犬神は笑みを浮かべ、勝利にいった。
「やはり、淀屋は面白い、仕手戦のために会社を担保にするとはな。
証券会社の担保とは前代未聞だが、ある意味、最強の担保かもしれんな。
信用取引の件は承知した、うちの社員に仕手戦を教えてやってくれ」

【コラム】働かざる者も食べられる

誰もが一度は聞いたことがある「働かざる者食うべからず」。
働こうとしない怠惰な人間は食べることを許されない。
食べるためには真面目に働かなければならないということ。
自身も子どもの頃、親からよく聞かされた言葉であるw

親たちが現役だった時代は、会社員は終身雇用が当たり前だった。
勤続年数が長くなればなるほど、定期昇給で給与も増えた。
銀行に預けるだけで、利息で物価の上昇をカバーできた。
定年まで勤め上げれば、退職金で住宅ローンを完済することもできたw

親たちが現役だった時代は、「選ばなければ仕事はある」時代だった。
仕事を選ばなければ、働いて食べていくことができた。
野村総合研究所と英国オックスフォード大学が行った、驚くべき共同研究結果がある。
日本の労働人口の約49%が就いている職業において、機械に代替可能との試算結果であるw

これから先、現在ある職業が半減し、労働人口の半数が仕事ができなくなる。
「選ばなければ仕事はある」時代から、「選ばなくても仕事がない」時代になる。
労働者の半分は、資本家になるために、ある認識を持つことが必要になる。
持たなければならない認識は、「働かざる者も食べられる」であるw

2021年1月25日月曜日

銘柄を明かさない理由R403 鬼神と呼ばれた男(後編)

自身はオリジナル小説「銘柄を明かさない理由R」を執筆している。
「銘柄を明かさない理由R」は、5人の無敗の相場師と取り巻く人々の物語である。
現在、新シリーズの「出羽の天狗(でわのてんぐ)編」を執筆中である。
「出羽の天狗編」では、東の本間と西の淀屋の戦いが物語の軸となる。

「出羽の天狗編」には、信用取引による仕手戦の場面がある。
賢明なる読者の方は大丈夫だと思うが、信用取引に手を出してはいけない。
なぜなら、信用取引は証券会社が儲かる仕組みになっているからだ。
では、「銘柄を明かさない理由R 出羽の天狗編」をお届けするw
-------------------------------------------------------

第403話 鬼神と呼ばれた男(後編)

兜証券の社長室。
黒い眼帯をした社長の犬神、淀三証券の勝利と三助がいた。
ソファに坐る3人の前に、お茶を出した秘書が退室した。
"鬼神(おにがみ)"と呼ばれとる犬神さんを見るのは、久しぶりやな、三助は思った。

1949年(昭和24年)5月16日。
東京証券取引所で、売買立会が開始された。
だが、GHQにより、戦前戦中の「仕切り売買」や「先物取引」は禁じられていた。
そんな中、人気を集めたのが、将来、発行される新株の引受権である"ヘタ株"だった。

発行される際の価格が未定の"ヘタ株"は、「先物取引」と同じ売買が可能だった。
1950年2月、旭日硝子株式会社の増資新株、"ヘタ株"の売買が可能になった。
旭日硝子の理論株価は220円だったが、初日の取引終値は410円の大幅高となった。
当時、老舗大手証券会社の副社長だった犬神は、旭日硝子の"ヘタ株"を買い進めた。

日々、高値を更新する旭日硝子の"ヘタ株"に、全国の証券会社が売り方に回った。
同年4月、売り買いの均衡が崩れ、売り方による怒涛の売りが始まった。
前日終値の417円から67円暴落の350円となり、その日の取引は終わった。
誰もが売り方の勝利で、買い方の負けだと思った。

翌朝、東京証券取引所の立会場に、右目に黒の眼帯をした犬神が現れた。
「成り行きで全部買え」、犬神は自社の社員に激を飛ばした。
副社長である犬神の陣頭指揮に、売り方は、何か材料があるのでは、と不安になった。
やがて、買い方が優勢となり、この日の終値は101円高の451円となった。

あまりの過熱ぶりに、翌日から旭日硝子の"ヘタ株"取引には、取引制限が設けられた。
翌日も、東京証券取引所の立会場に現れた犬神は、自社の社員に激を飛ばした。
"鬼神"のような犬神の陣頭指揮で、終値は531円のストップ高となり、買い方が勝利した。
旭日硝子の仕手戦に勝利したのち、犬神は大手証券会社を退社、兜証券を創業した。

「話を聞こうか」、犬神がいう。
「"鬼神"と呼ばれとる犬神はんに頼みがある。
兜証券の信用取引をさせてくれへんか」、勝利がいう。
「なぜ、兜証券の信用取引がしたいんだ」、犬神が聞く。

「本間商会の本間大蔵とやりあうことになったんやけど、金が足りまへんねん。
信用取引なら、現物以上の金を動かせるやろ」、勝利がいう。
証券会社でありながら、仕手戦のために、他社の信用取引をしようというのか。
前代未聞の勝利の話に、"鬼神"こと犬神は驚かされた。

【コラム】勝率5割超えの個人投資家たち

日本証券業協会の「個人投資家の証券投資に関する意識調査について」がある。
上記調査によると、2019年に売買損益がプラスだった個人投資家は34.6%。
同調査では、年収や保有株の評価額などのグループに分けた分析を行っている。
グループの中で一つだけ、勝率5割超えのグループがあったw

勝率5割を超えていたのは、保有株の評価額が3000万円以上のグループである。
同グループで、売買損益がプラスだった人が占める割合は51.4%。
下図は、左が全体平均で、右が保有株の評価額が3000万円以上のグループである。
同グループの勝率が5割超えであることが、おわかりいただけるだろうw

どちらにも、2019年に売買を行わなかった人がいる。
同グループで、売買を行わなかった人の割合は17.9%。
売買を行った82.1%に、売買損益がプラスだった人が占める割合は62.6%。
売買した3人に2人は、売買損益がプラスだったことになるw

評価額(投資額)が多いほど、勝率が高くなるのは、複数の原因があると考えられる。
投資額が多くなることで、リターンも比例して多くなること。
投資時期を分散することで、平均取得単価を下げられること。
同グループの39%は100万円以上の配当を得ているが、これら配当の再投資などであるw

2021年1月24日日曜日

【コラム】保有資産3000万円未満世帯は半数ほどしかない

野村総合研究所の「日本における純金融資産保有額別の世帯数と資産規模」がある。
2019年の調査によると、純金融資産保有額が3000万円未満の世帯は、4215.7万世帯。
全世帯が5402.3世帯なので、全世帯に占める3000万円未満の割合は78%。
5世帯中4世帯は、純金融資産保有額が3000万円未満ということになるw

ところが、同調査は純金融資産をベースにしている。
純金融資産は、預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など。
さらに、純金融資産の合計額から、住宅ローンなどの負債を差し引いている。
住宅ローンを差し引いているにも関わらず、不動産を資産として計上していないw

不動産は現金化するのに時間がかかることが原因らしいが、おかしな話である。
日本証券業協会が、保有資産に不動産も含めた調査を行っている。
「個人投資家の証券投資に関する意識調査について」である。
2020年に行われた同調査によると、保有資産額3000万円未満の世帯の割合は44.5%w

下図は、左が野村総研の調査結果、右が日本証券業協会の調査結果である。
不動産を保有資産に含むか含まないかで、大きく割合が異なることがわかる。
現金化に時間がかかるかもしれないが、不動産もれっきとした資産である。
調査をするのであれば、実情に即した調査を行って欲しいものであるw

銘柄を明かさない理由R402 鬼神と呼ばれた男(中編)

第402話 鬼神と呼ばれた男(中編)

淀三証券の徒歩圏に、兜(かぶと)証券があった。
兜証券は、外壁に赤煉瓦が用いられた2階建ての建物だった。
翌日の朝、兜証券の玄関前には、グレーのスーツ姿の勝利と着物姿の三助がいた。
「ほな、行くで」、勝利は三助にいうと、玄関扉を開けた。

中には木製カウンターがあり、カウンターの奥には数名の社員がいた。
「いらっしゃいませ」、入口に近い木製カウンター奥の女性社員がいう。
三助を連れた勝利は、女性社員に向かった。
「あ、あの、どのようなご用件で」、女性社員が聞く。

「淀三証券の淀屋勝利や、社長に話がある、取り次いでもらえるか」、勝利がいう。
「お約束はおありでしょうか」、女性社員が聞く。
「約束はあらへん、淀三証券の話を聞く気があるのか、聞いてくれるか」、勝利がいう。
「少々、お待ちください」、女性社員が席を立ち、奥にいる男性社員に相談した。

相談された男性社員が席を立ち、勝利たちに向かって歩いてきた。
「お客様、せっかくですが、お約束がないと、お取次ぎできないことになっております。
申し訳ないですが、お約束していただいてから、お越しいただけますでしょうか」
真面目そうな年配の男性社員が、手もみしながらいう。

「あんたが社長か」、勝利が手もみする男性社員にいう。
「いいえ、私はこの部署の責任者でございます」、手もみする男性社員がいう。
「ほな、社長に聞いてくれや」、勝利がいう。
「ですから、お約束がないと、お取次ぎはできません」、手もみする男性社員がいう。

「社長に、淀三証券の話を聞く気があるのか、聞いてくれるか」、勝利がいう。
「で、ですから、お約束がないと、お取次ぎはできません」
男性社員が手もみをしながら、強張った顔でいう。
「社長に、淀三証券の話を聞く気があるのか、聞いてくれるか」、勝利がいう。

「で、で、ですから、お、お約束がないと、お、お、お取次ぎはできません」
手もみをやめた男性社員が、ヒステリックな口調でいう。
延々と2人のやりとりが続く中、奥にある階段から、黒のスーツ姿の男が降りてきた。
降りてきた男は、髪をオールバックにしており、右目に黒い眼帯をしていた。

社員たちが席を立ち、黒い眼帯の男に向かい、直立不動の姿勢になった。
静まり返る事務所の中、黒い眼帯の男が、勝利に向かって歩いてきた。
黒い眼帯の男は歩みをとめると、勝利にいった。
「社長の犬神(いぬがみ)だ、上で話を聞こうか」

2021年1月23日土曜日

銘柄を明かさない理由R401 鬼神と呼ばれた男(前編)

第401話 鬼神と呼ばれた男(前編)

「仕手戦」とは、仕手と呼ばれる投機家同士が、売り方と買い方に分かれた争いである。
投機的な売買で利益を得ようとする売り方と買い方による相場の状況を表す。
買い方は、安値の株を大量に買い続けて、株価を急激につり上げる。
売り方は、信用取引を利用し、割高と思われる株を大量に売ることで株価を叩き落とす。

信用取引を利用する売り方は、期限までに買い戻さねばならないルールがある。
売り方の買い戻しに対し、買い方はさらに買い上がることで、売り方を締め付ける。
売り方は、逆日歩や追証などの負担から、さらなる買戻しを余儀なくされる。
株価は急騰、他の買いを呼び込むことから、熾烈な激戦となることが多い。

三助が、初めて撤収の合図を出した日の夜。
淀三証券には、帰宅した事務員の山崎以外の4人がいた。
三助が、勝利、白井、板垣の3人に、撤収の合図を出した理由を説明していた。
「出来高の急増に伴う株価の急騰が、三助が撤収を合図した理由や」

「急騰しても、配当以上に上がれば売れば、よいのでは」、ロイド眼鏡の白井がいう。
「急騰すれば、そのぶん繰り返し売買できるのでは」、オールバックの板垣がいう。
「確かに、白井と板垣のいう通りや、けど、今回はそうもいかん。
例えば、3銘柄の1つ、白井担当やった海運株、取引開始値は50円やった。

ところが取引終値は36円高の86円」、三助がメモを見ながらいう。
「それが何か問題があるんですか」、板垣が聞く。
「海運株の年間配当は2円、取引開始値なら4分(4%)の利回りや。
ところが取引終値にすると、2分ほどの利回りや」、三助がいう。

「利回りが低くなることに、何か問題があるんですか」、白井が聞く。
「しかも、取引が終わる前、海運株は3円以上の値幅で売り買いされてたんや。
そんな激しい値動きの中で、配当以上の利益を出す売り買いは不可能や」
三助がいい、白井と板垣は沈黙した。

「ほな、どないしたらええんや、三助」、黙っていた勝利が聞く。
「ひたすら買い続け、天井での売り抜けしかありまへん」、三助がいう。
「ほな、それでいこうや」、勝利がいう。
「九代目、今いうた方法は、今の淀三にはできまへん」、三助がいう。

「なんで、できへんねん」、勝利が三助に聞く。
「今の淀三には、3銘柄を買い続ける金がありまへん」、三助が悲痛な声でいう。
しばらくの間、考えていた勝利が、何か思いついたのか、愛嬌のある笑顔でいった。
「三助、明日、ワテにつきあえ、白井と板垣は取引所で3銘柄の監視を頼むわ」

【投資手法】株式投資で勝つために必要な考え方

プロスペクトとは英語のProspectのことであり、期待や予想、見込みなどのニュアンスを持つ。プロスペクト理論はリスクを伴う状況下での判断分析として、米カーネマン氏らが1979年に公表した論文のタイトル名。
プロスペクト理論により、従来の投資効用理論では説明のつかない投資家の判断行動が現実に即した形で解明された。例えば、投資家は収益よりも損失の方に敏感に反応し、収益が出ている場合は損失回避的な利益確定に走りやすい。一方、損失が出ている場合はそれを取り戻そうとしてより大きなリスクを取るような投資判断を行いやすいとされる。
プロスペクト理論は行動ファイナンスや行動経済学と呼ばれる心理学の要素を応用した新たな経済学の分野を切り開いたとして、同氏は2002年のノーベル経済学賞を受賞している。
(野村證券ホームページより)

プロスペクト理論の元となった実験には、以下の2つの質問が用いられた。
質問1:以下の二つから選択しなさい。
 A:100万円が無条件で手に入る。
 B:コイン投げで表が出たら200万円が手に入るが、裏が出たら何も手に入らない。
質問2:あなたは200万円の負債を抱えています。以下の二つから選択しなさい。
 A:無条件で負債が100万円が減額される。
 B:コイン投げで表が出たら全額免除されるが、裏が出たら負債額は変わらない。

質問1では、堅実性の高い「A」を選ぶ人の方が圧倒的に多いとされている。
質問1で「A」を選んだほぼ全ての人が、質問2では「B」を選ぶことが実証されている。
利益があると、利益が手に入らないというリスクの回避を優先する。
ところが、損失に対しては、損失そのものを回避しようとする傾向があるらしいw

株式投資で勝つためには、多くの人と逆の行動をとることが必要になる。
したがって、質問1は、多くのリターンが得られる可能性がある「B」である。
質問2は、確実に負債(含み損)が減る「A」である。
仮に、質問1で「A」を選ぶことがあっても、質問2で「B」を選ぶことはないのであるw