12月1日、都内某所から無敗の個人投資家たちに対して、電子メールが発信された。
電子メールの件名は、「ニイタカヤマノボレ一二〇八」だった。
ニイタカヤマ(新高山)は戦時中に日本領であった台湾の山の名で当時の日本の最高峰。
一二〇八とは12月8日のことで、「攻撃前夜を12月8日とする」を意味する暗号だった。
無敗の個人投資家は、全国に94名の存在が確認されていた。
12月8日の後場が終わった後、無敗の個人投資家たちは攻撃準備に入った。
それは外国人投資家たちへの売り攻撃だった。
ある者は指値で発注、ある者は休みを取り、日中にリアルタイムで戦う準備をした。
12月9日、東京証券取引所の取引開始時間となった。
無敗の個人投資家たちの攻撃が始まった。
攻撃の多くは、元本引上げの売りだった。
11時30分、無敗の個人投資家たちの攻撃は成功に終わった。
攻撃の成功を見届けたある無敗の個人投資家は、都内某所へメールを送信した。
メールの件名は「トラ・トラ・トラ」、これは「ワレ奇襲ニ成功セリ」を意味する暗号だった。
都内某所から国内の機関投資家や証券会社に、「トラ・トラ・トラ」メールが転送された。
12時30分、国内の機関投資家や証券会社による第二波攻撃が開始された。
第二波攻撃は、外国人投資家たちに売りを悟られないよう慎重に行なわれた。
売り注文を小分けにし、指値にばらつきを持たせる。
第二波攻撃は、順調に成果を挙げていった。
取引終了5分前、ある外資系証券会社のトレーダーが攻撃に気づいた。
何だ、この出来高は、いつの間にこんな出来高になっていたんだ。
まさか、攻撃が始まっていたのか、トレーダーは慌てて本国へメールを送信した。
このときのメール「Sell The Tokyo Stock Exchange,This Is No Drill!!!
(東京証券取引所の売り、これは演習にあらず)」は歴史に残ることとなったw