2016年12月26日月曜日

【ショートショート】トラ・トラ・トラ

12月1日、都内某所から無敗の個人投資家たちに対して、電子メールが発信された。
電子メールの件名は、「ニイタカヤマノボレ一二〇八」だった。
ニイタカヤマ(新高山)は戦時中に日本領であった台湾の山の名当時の日本の最高峰。
一二〇八とは12月8日のことで、「攻撃前夜を12月8日とするを意味する暗号だった。

無敗の個人投資家は、全国に94名の存在が確認されていた。
12月8日の後場が終わった後、無敗の個人投資家たちは攻撃準備に入った。
それは外国人投資家たちへの売り攻撃だった。
ある者は指値で発注、ある者は休みを取り、日中にリアルタイムで戦う準備をした。

12月9日、東京証券取引所の取引開始時間となった。
無敗の個人投資家たちの攻撃が始まった。
攻撃の多くは、元本引上げの売りだった。
11時30分、無敗の個人投資家たちの攻撃は成功に終わった。

攻撃の成功を見届けたある無敗の個人投資家は、都内某所へメールを送信した。
メールの件名は「トラ・トラ・トラ」、これは「ワレ奇襲ニ成功セリ」を意味する暗号だった。
都内某所から国内の機関投資家や証券会社に、「トラ・トラ・トラ」メールが転送された。
12時30分、国内の機関投資家や証券会社による第二波攻撃が開始された。

第二波攻撃は、外国人投資家たちに売りを悟られないよう慎重に行なわれた。
売り注文を小分けにし、指値にばらつきを持たせる。
第二波攻撃は、順調に成果を挙げていった。
取引終了5分前、ある外資系証券会社のトレーダーが攻撃に気づいた。

何だ、この出来高は、いつの間にこんな出来高になっていたんだ。
まさか、攻撃が始まっていたのか、トレーダーは慌てて本国へメールを送信した。
このときのメール「Sell The Tokyo Stock Exchange,This Is No Drill!!!
(東京証券取引所の売り、これは演習にあらず)」は歴史に残ることとなったw