2016年9月29日木曜日

銘柄を明かさない理由R142 父と娘の思い

第142話  父と娘の思い

銀座の高級クラブでの面接を終えた帰り道。
調査会社に勤めている女性社員は、明かりのついたビルを見ながら思った。
父は休みの日には、家族をよく遊びに連れて行ってくれた。
潮干狩りに、海水浴、テーマパーク、年に数回の海外旅行。

ある日、父の勤めていた大手証券会社が破綻した。
まもなく両親は離婚し、学校でいじめられるようになった。
だが、いじめを受けていることを、母にも先生にも相談できなかった。
皆から羨ましがられるようなことをしてきた自分が悪いんだと思っていた。

ある日、大きな男の人が現れた。
大きな男の人は、一緒にいじめに立ち向かってくれた。
後でわかったことだが、大きな男の人はいじめの事実を公にしてくれた。
大きな男の人は、いじめに立ち向かった私を最後まで気にかけてくれた。

あれ以来、大きな男の人は現れなかった。
当時は気づかなかったが、今ならわかる。
あの大きな男の人は娘を何とかしてくれと、父から頼まれたのだろう。
父は今、どこで何をしているのだろう。

アルカディアを有する証券会社の社長は、社長室にいた。
社長室の机には、かって家族だった3人が写った写真がある。
破綻した大手証券会社で、社内一の美人といわれていた元妻。
元妻の横で愛らしく笑う我が娘、海外旅行での思い出の写真だった。

勤めていた大手証券会社が破綻した。
株の世界で一から出直すといったら、元妻が反対し離婚することになった。
元妻が引き取った1人娘の様子を、ときおり見ていた。
ある日、娘の様子がおかしいことに気づいた。

当時、社長だった今の会長に、娘に何があったのか聞いてもらった。
娘は学校でいじめられていた。
会長は娘とともに、いじめに立ち向かってくれた。
しかも信じられないことに、当時の社員を総動員してくれた。

会長、あのときのご恩は生涯、忘れません。
あなたの創業したこの会社、わたしは成長させ続けます。
会長の会社には、アルカディアメンバーをはじめ、優秀な人材が揃っています。
いつの日にか、必ず天下をとるので、その日を楽しみにお待ちください。