2016年7月14日木曜日

銘柄を明かさない理由R特別編 子供ファンドの反撃

特別編 子供ファンドの反撃

男は娘の資産を株で運用していた。
運用している株は、あるメガバンクの株だった。
昨年9月に初めて購入、以来、株価は下がり続けていた。
先週、その株は年初来安値をつけた。

10年近く株価の推移をみている男は思った、どうみても買いだと。
男が得意とする無限ナンピンは、購入時の半値になれば同数の株を買う手法。
買値は760円、半値は380円だ。
もし、無限ナンピンを仕掛けるなら、以下の取得単価になる。

(760円+380円)÷2=570円。
わるくない、しかし、さらに半値になったときはどうか。
380円の半値は190円。
この株の上場来安値は2011年11月25日の318円、190円はありえない。

仮に同額の100万円で全力買いした場合、どうなる。
((760円×1,300株)+(460円×2,200株))÷3,500株=572円。
全力買いすれば、無限ナンピンとほぼ同じ取得単価にできる。
明日の朝、全力買いの買い注文を出すか、男は決めた。

翌朝、男はPCを起動、娘の口座の取引画面にログインする。
為替は円安、ダウも上昇している、ノープロブレムだ。
男は460円、2,200株の買い注文を入れた。
いい買い注文だ、いつか兜神社で聞いた男たちの声が聞こえたような気がした。

ある証券会社の資産運用を担当する部署、通称アルカディア。
早朝、無敗のクイーンと呼ばれる女性社員はシステムチェックをしていた。
来たか、それは無敗の個人投資家の買い注文だった。
アルカディアでは、無敗の個人投資家の家族の取引口座もチェック対象だった。

通勤中のアルカディアメンバーに向けて、社長室秘書から召集メールが発信された。
「始業前にアルカディアへお集まりください」
始業時間になり、アルカディアでは朝のミーティングが行われていた。
無敗のクイーンがメンバーにいう。

「お前たちは選ばれし者だ、自分たちが社内、業界、いや世界で一番、偉いと思え。
お前たちに勝てる奴など、この世に存在しない、必ず目標を達成しろ」
東京証券取引所の取引開始時間となった。
開始3分後、男の買い注文は全数約定、その後、株価は騰がり続けたw