2016年1月23日土曜日

銘柄を明かさない理由R25 ゲームの達人

第25話 ゲームの達人

ある証券会社の資産運用を担当する部署、アルカディア。
創設者の社員は、資産運用のコンサルティングをしていた女性社員だった。
精鋭揃いの女性トレーダー10名で構成されたアルカディアは、連戦連勝の無敗だった。
今や10名の女性トレーダーを率いる創設者の社員は、無敗のクイーンと称されていた。

アルカディアでは朝のミーティングが行われていた。
創設者の社員が話していた。
「それぞれの手元にあるのが本日の目標だ、必ず本日中に達成しろ。
新人は午前中に先輩からトレーディングを教えてもらえ、午後から即、実践だ」

小柄な小動物を連想させる新人は、女性社員の間で知らない者はいない有名人だった。
その新人はあまりの天然ぶりに、頻繁に部署を異動させられていた。
先月、広報の女性社員が退職することになり、彼女は広報へ異動になった。
異動後、退職する女性社員がアルカディアメンバーで、自分が後任だと聞かされた。

アルカディアで、どんな仕事をするんだろう、自分にできるだろうか。
不安に思いながら、アルカディアに入室した彼女は思った。
なんて広くて明るい部屋なんだろう、壁には多くのモニターがある。
まるで、何かのアトラクションみたい、いったい、ここで自分は何をするんだろう。

朝のミーティング、彼女は必死でメンバーの顔と名前を覚えていた。
新人は先輩社員の顔と名前を最初に覚えましょう、彼女が入社時に受けた教えだった。
創設者の社員が何かいっていたが、聞いたこともない言葉が多く、よくわからなかった。
午前は先輩からトレ何とかを教わる、午後は実践ということだけはわかった。

午前中、先輩の横に座り、端末の基本操作とトレ何とかの仕方を教わった。
彼女は思った、えっ、それだけ、安く買って、高く売る、なんて単純なの。
トレ何とかより、今、はまっているゲームの方がよっぽど難しい。
よかった、これなら、私にもできそうだと。

午後になり、彼女は自分の席に座り、初めてトレ何たらを始めた。
だが目標のトレードを達成するまで、彼女は退屈だった。
もっと激しく値動きしてくれればいいのに、こっちの株みたいに。
ほら簡単に勝てるじゃない、彼女はいつしか指示されていないトレードを始めていた。

取引時間が終わったアルカディアは静かだった。
どうしよう、きっと怒られるんだ、新人女性は小柄な小動物のように怯えていた。
新人女性の成果に、創設者の社員をはじめ、アルカディアメンバーたちは絶句していた。
新人女性は午後のトレードだけで、9人の合計を上回る利益をたたき出していた。