2016年1月23日土曜日

銘柄を明かさない理由R24 その社員、天然につき

第24話 その社員、天然につき

ある証券会社の資産運用を担当する部署、アルカディア。
創設者の社員は、資産運用のコンサルティングをしていた女性社員だった。
精鋭揃いの女性トレーダー10名で構成されたアルカディアは、連戦連勝の無敗だった。
今や10名の女性トレーダーを率いる創設者の社員は、無敗のクイーンと称されていた。

創設者の社員以外は、普段は本来の配属先の業務をしている。
営業、受付、広報、経理、情報システム等の業務である。
結婚で退職したり、出産などで休職する場合、配属先の後任社員が新たにメンバーとなる。
一種の世襲制ともいえる体制がとられていた。

アルカディアメンバーが社長室秘書からのメールで、朝から招集されたある日。
朝のミーティングで普段は経理業務をしている社員は、横にいる女性を見て目を疑った。
なぜ、彼女がここにいるのと。
小柄な小動物を連想させる彼女は、女性社員の間で知らない者はいない有名人だった。

彼女は入社以来、部署を転々としていた、いや、させられていた。
長くても半年、最も短いときは数週間で異動になったと聞いたことがある。
彼女が部署を転々とさせられている理由は、その天然ぶりにあるという噂だった。
業務は人並みにこなせるらしいが、ときおり、とんでもない天然ぶりを発揮するらしい。

彼女が本社の受付をしていた頃、新入社員だった彼女は上司から注意された。
「騒々しいから社内では走るな、社会人なんだから落ち着いて行動しろ」と。
ある日のこと、来客に案内先を間違えて伝えたと、彼女は先輩社員に報告した。
先輩社員はすぐにお客様を追いかけなさいと指示したが、彼女は決して走らなかった。

彼女が地方の支店で営業のアシストをしていた頃、営業から年賀状の発送を頼まれた。
彼女はスピードが大事だと、その日の内に年賀状を準備し終えると、ポストへ投函した。
翌日、支店では顧客からの電話が鳴り止まない状態になった。
「年も明けていないのに、年賀状を送ってくるとはどういうことだ」という苦情だった。

彼女が本社に戻されて総務部にいた頃、上司の出張手配を頼まれた。
上司だからと一泊数十万円の高級スイートルームを手配した彼女は、上司に厳しく怒られた。
上司に怒られてから、彼女は暇を見つけては全国の宿泊先を調べていたらしい。
次の上司の出張で、彼女は外国人バックパッカーに人気の格安風呂なし宿を手配した。

彼女についての逸話は数多くある。
なぜ、彼女がアルカディアにいるの。
先日、退職した広報にいた女性の代わりかしら。
でもムリ、彼女はいつか大きなミスをするわ、普段は経理業務をしている社員は思った。