2016年1月18日月曜日

銘柄を明かさない理由R21 無敗のキング&クイーン

第21話 無敗のキング&クイーン

ある証券会社の資産運用を担当する部署、アルカディア。
創設者は、社長から任命された天才女性トレーダーだった。
精鋭揃いの女性トレーダー10名で構成されたアルカディアは、連戦連勝の無敗だった。
創設者である天才女性トレーダーは、無敗のクイーンと称されていた。

ある日のこと、創設者の女性の元に社長室秘書からメールが届いた。
「来週の月曜日、会長がお見えになります。
貴女と話がしたいとのことなので、予定しておいて頂けますでしょうか。
時間は当日、連絡させて頂きます」

会長か、本人を目にしたことはないが、噂は聞いている。
バブル相場で巨額の利益をたたき出し、今の会社を創業した伝説の相場師だ。
当時の業界では、無敗のキングと呼ばれていた男。
伝説の相場師が私に何の話があるのだ、創設者の社員には思い当たることがなかった。

翌週の月曜日、創設者の社員に社長室秘書からの内線があった。
社長室へお越しくださいという簡潔なものだった。
いよいよ伝説の相場師とのご対面か、どんな男なのか見抜いてやる。
創設者の社員は席を立ち、社長室へ向かった。

社長室秘書に案内されて、創設者の社員は社長室に入った。
応接用のソファには、スーツ姿の初老の男が座っていた。
横に直立不動で立っているのは、社長だ。
髪はロマンスグレーのオールバック、眼光は鋭く、高価そうなスーツを着こなしていた。

この男が伝説の相場師か、創設者の社員は思った。
男は誰かに似ている。
そうだ、以前、DVDで観た映画の俳優だ。
イタリアマフィアの映画で、主役を演じていたあの俳優だ。

会長は創設者の社員にソファに座るようにいい、秘書に飲み物を持ってくるよう命じた。
秘書が飲み物を持ってくるまでの間、会長はアルカディアの運用報告書を読んでいた。
飲み物を持ってきた秘書が退室すると、会長はアルカディア創業者の社員に質問した。
「相場で勝つために、最も大事なことは何だ」

いきなりの質問に、創設者の社員は思った。
この男、私を試してきていると。
おそらく、どのように答えても、奴は論理的に反論するだろう、どう答える。
そのとき創設者の社員の頭に、ある無敗の個人投資家の売買履歴が浮かんだ。