2016年1月16日土曜日

銘柄を明かさない理由R19 格差社会の真実

第19話 格差社会の真実

数年前、その男は東京の大学に合格し、都内で一人暮らしを始めた。
一人暮らしを始めてから、両親と妹が住んでいた実家が全焼、家族全員が亡くなった。
焼け跡の残る実家の前、不思議と涙は出なかった。
ひょっとすると両親や妹はどこかで生きているのではないだろうか。

ある日、突然、自分を驚かせに来るのではないか。
幾度もそんなことを思ったが、両親や妹が男の前に現れることはなかった。
家族が亡くなってから、男を取り巻く環境は一変した。
男には家族の生命保険や実家の土地など、若さには不釣合いな資産がもたらされた。

葬儀の席で、親戚の叔父や叔母がいってくれた。
「君のお父さんには世話になった、これからは私が恩返しをしなくてはと思っている」
「これから1人で生きていくのは大変でしょう、いつでも頼りにしてくれたら、いいのよ」
「ウチは子どもが1人しかいないから、いつでも遠慮せずに泊まりに来てちょうだい」

親戚の叔父や叔母は、本心からいってくれているのかもしれない。
だが、叔父や叔母の横で、男を見る子どもたちの目は違った。
子どもは純真なため、感情を隠そうとしない。
自分たち以外の者が、親の愛情を受けようとすることに明らかに反対する目だった。

親戚の子どもたちの目を見て、男は思った。
自分は1人で生きていかなくてはならないと。
親戚に頼ることは、親戚の平和な家庭を壊すことになるかもしれない。
これも運命だ、人に頼らず生きていくことこそが自分の運命なのだと男は悟った。

1人で生きていくと決めた男は、ライフプランを作ることにした。
男の生涯にわたるライフプランだった。
なんだ、今の社会は、出来上がったライフプランに男は愕然とした。
大手企業に入社し勤め上げたとしても、定年後の暮らしが保証されるかわからない。

これが格差社会か、厳しい現実に、男はしばし呆然とした。
結局、少数の資本家が、労働者から得た利益で、自分の懐を潤わせているのか。
まだ自分の人生はこれからだ、労働者のままで終わりたくない。
資本家になるにはどうすればいい、男は考えることにした。

ある日、富豪といわれる人々について、男は調べていた。
ほとんどが大手企業の創業者だったが、中に株式投資で成功した男がいた。
株式投資とは何だ、調べているうちに、男はあることに気づいた。
大手企業の創業者も自社株の価値を上げることで、富豪になっていたことに。