2015年12月29日火曜日

銘柄を明かさない理由R10 マネーゲームの始まり

第10話 マネーゲームの始まり

男は、知識を得ることから入るタイプだった。
休日はもちろんのこと、ヒマさえあれば株式投資の本を読み漁った。
歴史的なベストセラーもあれば、一発屋の素人投資家の本もあった。
やがて、歴史から心理学まで、男が読んだ本の分野は多岐におよんだ。

相場は人の動きに、左右される。
多くの人の考えや行動が、相場の値動きを決めている。
どうしたら、相場で多くの人と反対の動きができるのか。
考えたが、結論らしきものはでなかった。

考えていても仕方がない、やってみるしかない。
男は証券会社に口座開設を申し込んだ。
やがて口座が開設され、なけなしの金を振り込んだ男は思った。
いよいよだ、ここから自分の人生を賭けたマネーゲームがスタートする。

元手は、わずか数百万円。
買える銘柄も株数も限られている。
生まれて初めて株を発注する男は、緊張しながら指値で株を発注した。
こうして男の株式投資は始まった。

株を始めてから、男の生活は変わった。
毎日のように、株の評価損益額を確認するようになった。
今日は何円増えた、今日は何円減った。
小額の変動だったが、男は思った。

このような世界があったのか。
これが株式投資による資産運用なのかと。
最初は数千円単位の増減だったが、ほどなく数万円単位の増減になった。
男は思った、株は面白いと。

男の投資資金は少ないため、数銘柄にしか投資できなかった。
男が保有する銘柄は、いつも3銘柄から5銘柄だった。
たまたま男が買った銘柄の株価が、大きく騰がることがあった。
短期間で100万円を超えた含み益に男は思った。

株は簡単だ。
自分がこれだと思った株を買って持ち続けていればいい。
だが男はまだ知らなかった。
相場には二つの顔があることを。